滋賀県の名産といえば鮒ずしですが、私はこれが一口も食べられません。
鮒ずしを食べられないというと、非県民というような眼で見られて、滋賀県では人づきあいをするうえで、とてもハンデを背負っているような気がします。
さかのぼること私が幼稚園児の頃、父親が喜んで鮒ずしを食べている匂いがたまらず、4つ上の兄も小学生のくせに美味そうに食べるのを横目で見ていると、父親が「お前も騙されたと思って、一回食べてみ」というので、そのころの私は案外食べず嫌いのものも結構あって、食べてみたら止められなくなるぐらいおいしかったという発見が続いていたので、一度チャレンジしてみようという気になって、一切れ口にいれた瞬間に見事に騙されたと思い、それからは父親の言葉といえども100%は信じない疑り深い子どもになりました。
最近でこそ鮒ずしの香りもマイルドになってきましたが、その頃の匂いはより一層えげつなかったうえに、それを最後にお茶漬けにするのが父の大好物で、この世のものとは思えない匂いを放っていたことは、今でも父親の記憶とともに残っています(父はお蔭様で今なお健在です)。
思い返せばその他にも父と兄はかなりのゲテモノ食いで、ある時なんか近所に蜂の巣を見つけたといって、二人して蜂に攻撃されながらも、なんとか蜂の巣を収穫してきて、蜂の幼虫をバターかなにかで炒めて旨そうに二人が食べているのを見ていると、「おまえも食べろ」と父が言いましたが、鮒ずしで懲りているので無視していると、「あいつは好き嫌いが多くてあかん」と二人で言っているので、その時は自分は好き嫌いの多い、いけない子というような自覚でいましたが、小学校に行くと給食で他の子がピーマン嫌い、ねぎ嫌い、牛乳嫌いなどと普通の市場で売っているようなものを食べられないのを見て、幼稚園児が鮒ずしや蜂の幼虫を食べられなくても、世間一般では好き嫌いが多いという定義にあてはまらないことに気付きました。実際、「何か食べられないものありますか?」と聞かれた時に「ありません」と答えて、鮒ずしが出てきたということは一度もないので、父兄以外に好き嫌いが多いなんて言われたことは全くなく、むしろ雑食系と言われる方が多いです。
この前、実家に帰った時に、父がまた鮒ずしを前にして私の次男に「騙されたと思って、・・・」とやっていたので、次男もまた鮒ずしが食べられない、おじいちゃんの言葉を信じない孫となってしまいました。
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